| 山崎拓: |
この前、NHKの日曜討論で野党の方が「そんなこと起こらないのにそんな法律を作る必要はない」と、つまり日本は侵略されるなんて起こるはずがないと主張した。じゃあ自衛隊はいらない。侵略が起こるはずがなければいらないわけで、もちろん日米安保条約もいらないはずです。日本がもう完全に安全であれば、何もしなくてもいい。そうでしょう。自衛隊の予算は5兆円です。ほとんど動かしませんので、もうこの10年ぐらい5兆円できたと思いますが。そういう防衛予算をわれわれは使っていて、もし侵略がないとすればそんなものは無駄じゃありませんか。だからたちどころに廃止するべきであるということになる。それは共産党の方がおっしゃったんですが、「共産主義国家は重武装国家ばかりじゃないか」ということを私はそのとき言ったんです。共産主義国家は口には出さないが、侵略を警戒しているから重武装しているんだろうと思うんです。共産主義国家は侵略を受ける可能性があるが、自由主義国家は侵略を受けないと、そんなことはあり得ないわけです。アメリカは大自由主義国家ですが、今度ああいう形で侵略を受けた。
要するに体制の問題ではなく、「備えあれば憂いなし」で、自衛隊があるから、日米安保体制があるから日本は侵略を受けないというふうに私は考えている。侵略の態様は冷戦時代と今のような地域紛争多発の時代とはちょっと違う。しかもテロが頻発する時代になってきています。
いずれにしても日本の平和と安全と独立を守るのは政治の最大の任務です。アダム・スミスが「夜警国家」という言葉を使ったことがあります。ちょっと乱暴な解釈かもしれませんがアダム・スミスは完全な自由主義、市場主義者で、政府がやることは国を守るという夜警の役割だけだというのが「夜警国家」の考え方です。
今度イスラエルに行ってイスラエルの人から言われたんですが、「日本の国民は平和と安全を空気や水と同じように無料(ただ)だと思っている」と。前もイザヤ・ベンダサンという人がそういう本を書いたことがありますが、決して平和と安全はただではありません。われわれが政治の責任においてそれを担保するということです。ただ、国民はそのことに気づかないでいる、それでいいと思います。そんなこといちいち意識しなくても良いくらい平和で安全な国を、政治の責任においてつくっていくことが、われわれの安全保障政策の根底の思想であるということを申し上げて、時間オーバーしたと思いますがお話を終わります。
―(拍手)― |
| 司会: |
安全保障政策について政治の中枢にいらっしゃる立場からのご意見をいただきました。この後、今のお話に関して1つ、2つ質問を受けたいと思います。
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質問: |
私、昨年まで陸上自衛隊に勤務しておりました。現在は大学院で危機管理を研究しています。
2つお願いと、1つ質問があります。1つは有事法制の件ですが、有事法制を語るときに「有事法制をすれば軍国主義になるのではないか」という懸念が出ると思いますが、そうではなくて「有事法制を作ることによって文民統制や民主主義が守れるんだ」と、「法治国家体制が守れるんだ」という理念の部分をテレビなど、幹事長よくお出になりますので、そのところを語っていただきたいということです。そして自衛官が誇りを持って、後顧の憂いなく働ける環境をつくっていただきたいと思います。また2点目としては、今度PKOの本体業務が解除になりますが、私、施設科小隊長などをしておりましたが、地雷の処理は本当に危険な業務で、もしあれに自衛隊が参加するのであれば、いつ死人が出てもおかしくないものですから、どうか国家の中枢にいる責任ある立場として、海外に送るときはそれだけのご覚悟をもって自衛隊を使っていただきたいと思います。最後に質問ですが、先生はずっと安全保障ということをテーマにしておられますが、基本的なことで恐縮ですが、先生の目指す世界観といいますか、将来の東アジアあるいは太平洋地域のあるべき姿、このまま日米同盟あるいは個別の国の同盟関係を中心にしていくのか、ヨーロッパのNATOのような形を目指しておられるのか、そういった基本的な部分の世界観をお聞かせ願いたいと思います。 |
| 山崎拓: |
最初の2つについてはよくわかりました。そのように心がけます。それから今の世界観の話ですが、1996年、平成8年に日米首脳会談があって、アジア太平洋地域の平和と安全に関して共同連帯してこれを守ろうという共同声明を出した。日本の役割は自らの国を守ることももちろん大事なことですが、同時にアジア太平洋地域の平和と安全にどういう形で貢献できるかということだと思います。アジアの一国として日本の役割は大きいと考えています。これはG8を見ても、アジアの代表、有色人種の代表は日本だけです。もちろん国連の安保常任理事会もあり、日本もいずれは常任理事国入りを果たしたいと思いますが、今のところはアジアの代表として世界の重役会議というか役員会とも言うべきG8に参加しています。G8は始まったときはエコノミックサミットで経済問題だったんですが、今は安全保障問題もすべてやるようになってまして、その一角に日本がいるということは、アジアの代表としているということですので、アジア太平洋地域の平和と安全に関して日本の役割があるのではないかと思います。
中国に私はしばしば行きますが、中国の政治指導者と話したときに、日米安保体制についていろいろと批判があることがあります。「それじゃ日中安保条約を結びますか」と、「日本と中国と同盟関係になりますか」ということを言ってみますと、それには返事がありません。中国には日本と同盟関係を結ぶ意思はないと思います。お互いに力を合わせて日本が攻撃を受けたときは中国が守ると、中国が受けたときには日本が守ることですが、そんなことを中国は望んでいないことは明確です。中国は経済的にも今日本の経済を脅かしていますが、それは別に悪いことではなくて、中国が経済発展していくその過程において、非常にコストが安いのでどんどん日本の産業が中国に生産基地を求めて出て行くという現象があり、経済的には日本は中国の台頭におびえているところがあるんですが、それはそれとして、安全保障政策の面において今おっしゃったようにNATOのような組織がアジアにできるかというと、それはエピソードで申し上げたとおり、そう簡単にいくことではありません。非常に理想的ではあるが、現実的には難しい話で、われわれはASEANの諸国と緊密な関係を保ち、できうれば朝鮮半島の安定を得て、統一国家ができるのはいつの日かわかりませんが、朝鮮半島が一番われわれにとって危険な地域ですので、そことの関係をうまく保っていくにはどうしたらいいか。これはアジア太平洋地域の平和と安定に関して日本が責任ある対応、積極的な対応をする基本的な意思を持って、現状に即した、時代に即した手を打っていくことだと思います。当面はとにかくASEAN諸国と緊密な関係をとること。特に経済的な関係において緊密な関係をとることが必要ですし、PKO活動なんかは東ティモールの独立支援に積極的に参加して、国際貢献を軍事的にも果たしていくことが必要じゃないかと。必要なところは憲法を改正して、集団的自衛権の行使ができるようにすることが望ましいと思います。 |
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質問: |
政策についてではないんですが、一新塾には政治に志のある人も多いと思いますので、山崎さんが政治家を目指したきっかけといいますか、志とか思いがおありになったと思うんですね。そこでわれわれを勇気づける意味も含めて、その青雲の志といったところをちょっとお話聞かせていただきたいのと、それとそういう志が今こうやって先生のように自民党の中枢にまで重責を担われるようになったが、現在その志が遂げておられるかどうかということをお聞かせいただけたらと思います。よろしくお願いします。 |
| 山崎拓: |
私が政治を直接的に志した動機ですが、私は福岡の修猷館という高等学校を出たんですが、その高等学校の先輩に政治家が非常に多いということもあったのではないかと思います。今回、外務大臣候補になった元UNHCR代表の緒方貞子さん、ご本人は犬養健のお孫さんですが、ご主人のお父上、つまり義理のお父さんは緒方竹虎という高名な政治家でした。この方は修猷館の大先輩で、私の最も尊敬する政治家のひとりです。政治家志望の非常に多い学校に育ったことが下地としてはあったように思います。
しかし、私の家は炭鉱をやっておりまして、私はずっと実業家になろうと考えていました。ところが学生時代に実家の炭鉱がつぶれたので、私はやむなくブリヂストンタイヤでサラリーマンになった。その頃に、総理府がやった青年海外派遣事業にたまたま私の姉が応募したんです。姉は実は年齢制限で参加資格がない。そこでどういうわけか、私の名前に変えて提出したら行けることになった。私はサラリーマンですからそう簡単に休めないんですが、無理やり会社の了解を得て3カ月間海外に行くチャンスを得ました。昭和37年のことですが、その当時、海外に行ける人はほとんどおりません。特に若い人は、よほど幸運の持ち主でなければ留学なんてできなかったのです。しかも、2万円以上海外に持ち出せない為替制限があった。私は15人の青年派遣団の一員として船に乗って、ヨーロッパに行きました。途中、寄ったところが香港、仏領インドシナ、今のベトナム、それからシンガポール、インドのボンベイ、セイロン、今のスリランカですね。それからスエズ運河を通ってカイロに行って、マルセイユに上陸しました。マルセイユから2カ月ずっとヨーロッパ8カ国、15人の青年でまわった。
その旅を通じて、当時のアジアの国々、ヨーロッパの国をつぶさに視察することができて、なぜアジアの国々が貧困にあえいでいるのか、ヨーロッパ諸国がはるかに日本より進んでいるのはなぜか、を考えました。ヨーロッパは社会保障と社会福祉の両面ではるかに当時進んでいたんですが、同じ世界大戦の経験をしながらその差はどこからくるかということをいろいろ考えた末に、これはやっぱり政治だと、政治の差によって国々の運命が左右されていると考えたのです。
しょっちゅう戦争をやっている国はものすごく貧乏であるし、安全ではない。常に生命、財産が脅かされていますから豊かになれない。まず戦争をやらないことが大事です。それは政治の決断ですね。そういうことを考えた末に、日本がこれから発展するためには、政治が安定し、いい政策を展開することにかかっているというふうに考えた。それが政治家になろうと決心した理由の1つです。
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