| 岡野俊一郎: |
ちょっとサッカーから離れるんですが、私は、中教審、臨教審、生涯 学習審議会というところで20年近く委員をさせていただいていました。議 論しながらつくづく考えるんですが、仲間と一緒に仕事をする「心」、それと活力のある「 身体」、この2つをスポーツを利用してもう少し今の若者に持ってほしいなという気 持ちを非常に強く持っているんです。自分のことしか考えない。ちょっと電 車へ乗ると平気で床に座っている。若い人たちが活力があって、明るい顔をして何かしようという感じがちょっと欠けてるんじゃないかなと。 ですから、スポーツ施設をもっと利用し、学校でももっとスポーツを使って、 国際化の中で生きるわけですから、仲間と一緒に仕事をしようと。自分だけで楽 しむんじゃなしに、場合によっては自分にとっては損だけど、チームにプ ラスになることだったら自分が多少損してもやるんだというような気持ちが、 私も年とったのかもしれませんけど、今の若者を見てるとちょっと欠けてるような気 がして仕方がないんです。いかがですかね、そこら辺は。 |
| 山崎拓: |
いろんなことが言えるんですけど、今おっしゃったことは私がかねてから感じていることでもありますね。 私は柔道なんですね。これは個人競技なんですよ。もちろん団体で試合することはありますが、 それも5人選手が出て、3勝2敗とか、そういうことなんですね。サッカ ーのような団体競技と違うんですね。団体競技はチームワークが要求されるわけです。 ひとりではどうにもならないので、みんなで球をつなぎ合わせていってゴ ールへ向かう、あるいはみんなで守らなきゃ守れないわけで、チームプレー に徹するということが要求されますね。柔道はチームプレーというのがないわけです。 総取りではありますが、試合は自分ひとりでやりますから。 |
| 岡野俊一郎: |
1対1ですね。 |
| 山崎拓: |
1対1ですからね。ですから、どうも、自分が比較的エゴイストなのはそのせいかな( 笑)と思ったりするんですけど……。団体競技の良さはチームプレーにある。 それで私は国会議員になってからずっと、ソフトボールをやってるんです。 柔道の傍らですね。全然違った種類のスポーツですけど。ソフトボールはサ ッカーほどではないが、やっぱりチームプレーですね。私はピッチャーなんですが、 ピッチャーだけではどうにもならないんで、ほとんど野手にとらせるわけですから。 そういうことで総力戦なんですね。やってみて団体競技のほうが教育上良いと思 います。 それから、団体競技に限らず、個人競技でも大事な点は気力です。この気 力というやつが社会で活動する上においてどうしても必要ですね。同じ意味になりますが、 競争心がない人はだめですね。競争心だけで、才能がないといけませんが、 まあ、才能のない点はある程度、競争心や気力でカバーできると思います。 それから練習量ですね。練習量はものすごく大事なんで、「継続は力なり」 という言葉がありますが、練習は絶対無駄じゃないですね。柔道では特に稽 古量が強さを規定すると言われるぐらいに、稽古は大事です。今の小泉総理の聖域なき構 造改革のキャッチフレーズじゃないが、たゆまず、ひるまず、立ち止まらずやるという、 この精神ですね。やっぱりスポーツで鍛えられた人はそういうものを持っている、 身につけていると思います。 |
| 岡野俊一郎: |
確かに柔道は勝負は1対1ですけど、やっぱり指導者が重要ではないでしょうか。 ある程度、自分でももちろんやれるけど、やっぱり良い指導者にぶつかるということが自分を伸 ばす上でも大事なんじゃないかと思うんですけど。 |
| 山崎拓: |
そうですね。自分の技にどういう良いところがあるか、どこに欠点 があるかということは、外から見ないとわかりませんね。自分自身で経験である程度身につきますけど、こうしたら技がかかるとか、こうしたら投げられるとかいう感覚
はわかりますけど、指導者がそれを見て、注意してくれたほうが早いですよね。
早く上達しますね。それと、やっぱり指導者を尊敬できるということが大事ですね。
人格的に尊敬できない人の下では多分良い選手は育たないんじゃないか。 指導者の役割って非常に全人格的なもので、技だけじゃないと思うんですね。 |
| 岡野俊一郎: |
そういう意味では、勝負は1対1ですけど、やっぱりひとつのチー ムみたいな、指導者と選手というコンビがよければ、進歩も早いし、力もつけられると。 |
| 山崎拓: |
そうですね。まあ、本人が持っている素質、隠された才能みたいなものを引き出 してやるということも指導者の大事な役割で、教育者とイコールだと思います。 教育を英語でエデュケーションと言いますが、この語源はご存じだと思いますけど、 ラテン語のエルカシオというのからきているそうです。エルカシオは「引き出 す」という意味だそうで、何か教えるということではなくて、その人の持ってる素 質を引き出す、才能を引き出す、そして開花させるのが本来の教育の目的 なんですね。才能のない人はいません。みんな何らかの素質を持ってるわけですね。 算数が得意な人、走るのが速い人、記憶力の良い人、心のきれいな人とか、 何らかの素質があるわけで、そういうものを引き出して、周りの人との関係 をよくして、良い仕事ができるように誘導するということじゃないでしょうかね。 |
| 岡野俊一郎: |
私もそのとおりだと思いますね。そういう意味からすると、今の学 校教育には何かが欠けていると思いますね。 |
| 山崎拓: |
それは押し込むからですよ。詰め込み主義教育という言葉がありますけど、 あれはいかんと思います。引き出してないわけですよ。同じ知識を全部にイ ンプットするわけです。みんなカボチャになっちゃうわけで。一面のカボ チャ畑になっちゃう。カボチャって悪い食べ物じゃなくて栄養はいっぱいあるんだけど、 昔、私はカボチャばっかり食べてた世代なんで、あんまりいい思い出がカ ボチャにないんです(笑)。カボチャ生産者に悪いけど。 |
| 岡野俊一郎: |
私も同じような世代ですから(笑)。私も今、ほとんどカボチャは食 べなくなっちゃったです。 |
| 山崎拓: |
あのころもう鼻についちっゃて。あんまり食べさせられたものだから。 |
| 岡野俊一郎: |
そうですね。子どもが小さいときに、僕が息子に「何でも食べなきゃだめだ」 と言ったら、「お父さん、カボチャ食べないじゃない」と言うから、「いや、 もう一生分食べた」とか言って(笑)。 |
| 山崎拓: |
カボチャ談義はともかくとして(笑)、やはりコーチが重要ですね。 |
| 岡野俊一郎: |
ええ、やっぱり日本のサッカーが伸びたのは指導者養成がうまくいったからだと思 います。おっしゃったように、子どもたちの良い点をうまく引き出してやると、 欠点があっても、それも消えていきます。だから、良いのをどんどん引っ張っていけば良いんですが… …。高校生を教えてた先輩が、お亡くなりになるちょっと前に、年賀状に書いてこられたことなんですが、 教えることより、やらせることのほうがいかに難しいかを痛感していると。 教えるのは知識を持っていればやれるんですね。だけど、子どもたちが進 んでやろうという意欲、それを引き出すのはいかに難しいかということを痛感していると… …。 |
| 山崎拓: |
ひとりひとり違いますから、同じことを教えてもだめですね。背の高い人 、低い人、体重の多い人、軽い人、体のかたい人、やわらかい人、腕力のある人 、ない人、足が速い人、遅い人、腰が良い人、悪い人、みんな違いますからね。 どこかいいところは持ってるんだけど、悪いところも持ってますから、それをひとりひとり、適性というか、 素質をちゃんと見抜ける人じゃないといけませんね。だから、選手に対する愛情がないと、 コーチは通り一遍に教えちゃうから。柔道の世界で言うと、背負い投げに向く人 と、足払いに向く人と、違いますからね。足の短い人にいくら足払いを教えても、 背負い投げさせたほうが早い。 |
| 岡野俊一郎: |
なるほど。そうですね。やっぱり自分の体に合った武器をつくっていく。 政治にも通用するような話ですね。 |
| 山崎拓: |
そうです、そうです。ですから、やっぱり得意な分野を政治家にも持たせるということが大事で、 私は政策集団を率いてましたけど、やっぱりその人その人が持ってる特質を見抜いて、 そういう場で活動できるように仕向けています。経済が得意な人、安全保障が得意な人 、憲法が得意な人って、いろいろ得意な分野はおのずからあるんですよね。 不思議なことで。 |