| 山崎拓: |
富士山と言えば、”夜目遠目傘のうち“という言葉がありますね。 夜見たとき、遠くから見たとき、傘をさしているとき、女性はよりきれいに見える。 けれど、実際はそれほどではない、という意味なんですが、たとえ話として使 いましたら、それは女性差別用語だと言われまして。 |
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野口健: |
それ、女性差別用語になるんですか? |
| 山崎拓: |
ええ、それでその言い方を止めて、今度は「あの人は富士山のような人 だ」と言うようにしています。遠くから見たらすごくきれいだが、近くから見るとかなり汚い。
私は実は登ったことがないんですが、富士山を近くから見ると岩肌やなんかで名峰富士という感じじゃない。山中湖くらいから見ても、遠くから見た感じと比べるとずっとゴツゴツしている。それが、実際に世界遺産に登録できないほど汚いというのはシ
ョックでしたな。環境問題は人類の生存に関わることですから、身近なところから改めていかなければならないでしょうね。
また、私は人間の排泄物は、いずれ溶けてなくなると思ってましたから、 それがそのまま残るなどというのは意外でした。 |
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野口健: |
温度が低いと、有機物を分解するバクテリアが働かないんです。エベレストはこれまで1000人ほどが登頂に成功していますが、約300人が遭難してるんです。その遺体はほぼ回収されていませんので、8000mから上には遺体がいたるところに転がっているんです。分解されないので、自然に永久保存されています。今年はネパールの政府の方から遺体の回収をしてくれと言われて、困ったな、と思ってるんです。富士山みたいに火山灰でできたところや氷河では、バクテリアが少ないので腐らない。上空から富士山の映像を見たんですが、山小屋があってその下に白い川が何となく見えるんです。で、それをズームインしていきますと、長年流してきたトイレの跡なんです。トレットペーパーがずーっと乾いて残
ってるんですが、し尿だけは地面に染み込む。このままだと、やがて周りの湧
き水もやられるだろうと言われています。
環境省の方に入山料やバイオトイレ、なぜすぐやらないの?と聞きましたら、水が汚染されてて、その原因がこれだという確実なデータが出ない限り、なかなか提案できないとおっしゃってましたが、汚染されたデータが出た時には、もうどうしようもない。専門家が調査すれば、何万人の人のし尿が何十年
と垂れ流されていれば、いつ頃危なくなるか予測可能なわけですから、どう対応をとっていくか、という段階だと思います。もうひとつ、入山料が今までなかなか実現しなかった要素として日本の国立公園は国だけの財産ではないんですね。私有地もずい分入ってます。富士山は山梨県と静岡県と分かれてますし、8合目から上は神社の持ち物なんです。
アメリカみたいに国立公園は国のもので、完全に100%関与すればコントロールが効くんですが、日本はなかなかそこのところが効かない。あとは、お金を取ると観光客が来なくなるという地元の方々の反対があって、多分、これが一番のネックだと思います。僕のホームページで、富士山の入山料、賛成派、反対派と意見を集めているんですが、ときたま地元の山小屋とかの経
営者の人から反対意見があります。「皆さん賛成してますが、一人1000円払ってでもあなたは富士山に来てくれますか」と。この間、富士山を掃除してましたら、いろんな登山者が、僕の入山料についての主張をどっかで見てて「入山料いいですよ。できたら私は払います」と言ってくれました。もうこれからは多分、伝え方によっては可能になってくるんじゃないかなと、そんな手応えを感じています。 |
| 山崎拓: |
受益者負担の原則も税制、社会保障と似ていますね。制度を維持するために、 一定の負担を求めるという考え方で設定するわけですが。環境を守るという視点 で、社会的な使命として負担してもらって、その資金で対策を打つということですね。 |
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野口健: |
そうです。 |
| 山崎拓: |
そういう自分の利益と負担の関係ですね。医療の場合は国内の国民レベ ルの話だけれども、環境の問題は世界レベルになりますからね。単に富士 山の環境だけではなくて日本全体、世界中の環境ですからもっと大きな問題かもしれませんよね。 |